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鹿児島の交通と物流、将来の備えは?熊本地震を機に東九州道・東九州新幹線・海上輸送を考える

コラム

令和8年熊本地震の発生後、被災地である熊本だけでなく、鹿児島の経済・物流にも影響が生じ始めています。

九州新幹線や鹿児島本線、九州自動車道の一部が使えなくなり、鹿児島へ向かう人や荷物にも影響が広がっています。JR貨物も、地震による九州地区の貨物列車の運休を公表しました。

鹿児島県全体の物流や経済に、実際どの程度の影響が生じているのかは、現時点では分かりません。ですが、鉄道と高速道路が同時に止まる状況を見ていて、素朴な疑問が浮かびました。

熊本を通る交通が長く使えなくなったとき、鹿児島へ人や物を運ぶ別の道は、どれだけ用意されているのでしょうか。

宮崎・大分を通る東回りの道路や鉄道、志布志港や宮崎港などからの海上輸送、さらに長期的な構想である東九州新幹線。こうしたものは、非常時の選択肢になり得るのでしょうか。

交通や物流の専門家ではないため、どの事業を進めるべきかを判断することはできません。そこで、過去の災害で実際に何が起きたのか、国や自治体がどのような検討を進めているのかを確認しながら、将来には、こういう選択肢もあるのだろうか?と考えてみました。

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  1. 新幹線も高速道路も、別々のようで同じ西回りに重なっている
  2. 過去の災害では、東回りと海上輸送が実際に代わりを担った
    1. 2016年熊本地震では、東九州側の港へ輸送を切り替えた企業があった
    2. 2018年の豪雨では、フェリーの有効性と限界の両方が見えた
    3. 2020年7月豪雨では、4車線と複数経路が早期の交通確保に役立った
    4. 2025年の豪雨では、東回りの日豊本線も長期間不通になった
  3. 「東へ回ればよい」「船に載せればよい」ほど単純ではない
  4. 行政の計画にも、すでに「別の経路を持つ」という考え方がある
    1. 道路では、ミッシングリンク解消と4車線化が進められている
    2. 港では、耐震化と港同士の広域連携が検討されている
    3. 東九州新幹線も、現在進行形で調査・要望が続いている
  5. 将来の備えとして、どのような選択肢があるのだろうか
    1. 東九州自動車道を、非常時にも頼れる東側の道路軸にする
    2. 日豊本線を、旅客と貨物の補完ルートとして強くする
    3. 志布志港・宮崎港・細島港を、海上の迂回路として使いやすくする
    4. 東九州新幹線を、長期的な旅客交通の別軸として考える
    5. 道路・鉄道・船を実際に切り替える準備をしておく
  6. どれか一つではなく、平時から使う経路を増やすことなのかもしれない
  7. 今回の地震を、鹿児島の暮らしを支える道筋を考えるきっかけに
  8. 参考にした主な公表資料
    1. 夏に行きたい!九州の涼しい観光スポット
    2. 夏だから楽しめる九州のアクティビティ・フォトジェニックな景色
    3. 九州の花火大会
    4. ばらまきお土産
    5. お菓子以外のお土産
    6. 珍しいお土産
    7. お酒に合うおつまみ・逸品

新幹線も高速道路も、別々のようで同じ西回りに重なっている

福岡や本州方面と鹿児島を結ぶ主な交通手段には、九州新幹線、鹿児島本線、九州自動車道があります。鉄道と道路という違いはありますが、いずれも熊本県内を通る九州西側の南北軸に重なっています。

普段は、新幹線が止まれば高速バスや車、高速道路が混雑すれば鉄道というように、別々の交通手段として利用できます。しかし、大規模な地震や豪雨で広い範囲が被災すると、複数の交通手段が同時に影響を受けることがあります。

今回の地震でも、九州新幹線と鹿児島本線、九州自動車道にそれぞれ影響が生じました。交通手段は複数あっても、広い意味では同じ地域を通っているためです。

そして、交通が止まる影響は旅行や帰省だけではありません。

  • スーパーやコンビニへ食品や日用品を届ける
  • 病院や薬局へ医薬品を届ける
  • 畜産農家へ飼料を運ぶ
  • 鹿児島の農畜産物や水産物を県外へ出荷する
  • 工場へ原料や部品を運び、製品を出荷する
  • 宅配便や企業間の荷物を届ける
  • 観光客、出張者、帰省客が鹿児島を行き来する

店頭に並ぶ商品も、鹿児島から県外へ届く品物も、見えないところで道路、鉄道、港に支えられています。物流は普段あまり意識されませんが、止まったときにはじめて、暮らしとの近さが見えてきます。

だからこそ、今回気になったのは、現在の復旧状況だけではありません。将来また西回りの交通が長期間止まったとき、東回りや海上輸送へどこまで切り替えられるのかという点でした。

過去の災害では、東回りと海上輸送が実際に代わりを担った

調べてみると、西回りの交通が止まった際に、東回りの道路や船が代替手段として使われた事例はすでにありました。今回初めて浮かんだ発想ではなく、過去の災害の中で実際に試されてきた方法です。

2016年熊本地震では、東九州側の港へ輸送を切り替えた企業があった

2016年の熊本地震では、九州自動車道や大分自動車道の一部が通行止めとなり、鹿児島本線も荒尾駅から八代駅にかけて不通となりました。

国土交通省の資料によると、陸上輸送が難しくなった企業の中には、細島港、宮崎港、志布志港を利用する国内定期フェリーなどへ輸送を切り替えたところがありました。飼料、紙・パルプ原料、酒類、飲料、農産物などで海上輸送が活用され、物流のつながりが維持されています。

鹿児島市から関西地方へ運んでいた農産物についても、陸路や鉄道から志布志港経由の海上輸送へ切り替えた事例が示されています。

つまり、志布志港や宮崎港、細島港は、平時の物流拠点であるだけでなく、熊本県内の陸上交通が止まった際に、その区間を通らず本州方面へ貨物を運ぶ役割も実際に果たしていました。

国土交通省「近年の災害による港湾の被害状況と課題・参考資料」

2018年の豪雨では、フェリーの有効性と限界の両方が見えた

2018年7月豪雨でも、陸上交通網の分断を受け、東京や大阪から九州へ向かうトラックの一部が長距離フェリーへ切り替えられました。道路の被災区間を海から回避することで、海上輸送の代替性が発揮された事例です。

一方で、フェリーならいくらでも荷物を受け入れられるわけではありません。

国土交通省の資料には、平日は長期契約の利用者でほぼ満船となっており、陸路から切り替えようとした新たなトラックの申し込みに、ほとんど対応できなかった時期があったことも記されています。

船が運航していても、貨物を載せる空きがなければ代替手段にはなりません。災害が起きてから船を探すのではなく、非常時に使える輸送枠や契約を平時から準備する必要がありそうです。

2020年7月豪雨では、4車線と複数経路が早期の交通確保に役立った

道路についても、複数の経路や車線を持つ意味が表れた事例があります。

2020年7月豪雨では、九州自動車道で土砂崩れなどによる通行止めが発生しました。ただし4車線区間では、被害のない車線を活用することで、緊急車両や一般交通を比較的早く通せた区間がありました。

八代から水俣の間では、国道3号が大規模な斜面崩落で通行止めとなりましたが、並行する南九州西回り自動車道があったため、約10時間後には交通機能が確保されています。

同じ方向へ向かう道路でも、一本しかなければ、その一本の被災が地域の孤立につながります。並行する経路があることや、片側が被災しても残る車線を使えることが、復旧までの時間を短くしました。

国土交通省九州地方整備局「災害に強い国土幹線道路ネットワークについて」

2025年の豪雨では、東回りの日豊本線も長期間不通になった

一方で、「西回りが止まれば東回りを使えばよい」と単純に考えることもできません。

2025年8月の大雨では、日豊本線の西都城駅から国分駅までが運転見合わせとなりました。西都城駅から霧島神宮駅までは8月26日に再開しましたが、霧島神宮駅から国分駅までは9月下旬までの復旧が見込まれる状況となり、バスによる代替輸送が行われました。

東回りの鉄道も、山間部や斜面、河川、沿岸部を通っています。東側に路線が存在するだけではなく、その路線自体を災害に強くすることも必要だと分かります。

鹿児島県「令和7年8月7日からの大雨による被害状況等」

「東へ回ればよい」「船に載せればよい」ほど単純ではない

過去の事例を見ると、東回りの道路と海上輸送は、実際に代替手段として機能しています。しかし、どの交通手段にも受け入れられる量や、災害に対する弱点があることが改めてわかりました。

交通手段非常時の強み現在考えられる課題
東九州自動車道乗用車、バス、トラックが目的地まで移動しやすい未開通区間や暫定2車線区間があり、交通集中や事故に弱い
日豊本線旅客や貨物を少ない人員でまとめて運べる単線区間、急勾配、被災しやすい箇所、貨物列車の運行本数に制約がある
フェリー・RORO船九州内の被災区間を通らず、本州まで直接運べる船の空き、港湾設備、荷役人員、港から先のトラック輸送が必要
東九州新幹線長期的には旅客交通の別軸になり得る多額の整備費と長い建設期間が必要で、貨物列車の代わりにはならない

特に日豊本線の貨物輸送については、宮崎県が現状と課題を詳しく整理しています。

宮崎県の交通・物流ネットワーク戦略によると、日豊本線の貨物列車は1日最大2便。大分以南には単線区間があり、大分県境の急勾配によって長い編成の貨物列車を走らせにくいという制約もあります。

県内にある4つの貨物コンテナ取扱拠点のうち、貨物列車が直接乗り入れているのは延岡と南延岡の2駅です。佐土原と都城は、貨物駅までトラックで運ぶオフレールステーションとなっています。

日豊本線は重要な補完ルートになり得ますが、現在の設備と運行体制のまま、西回りを走る大量の旅客や貨物をそのまま引き受けることは難しそうです。

宮崎県「宮崎県交通・物流ネットワーク戦略 本県交通・物流の現状と課題」

道路も同様です。東九州自動車道へ大量のトラックが一斉に回れば、暫定2車線区間や一般道との接続部で渋滞が起きる可能性があります。

港についても、船を降りた荷物を鹿児島市や霧島、都城、薩摩半島などへ運ぶ道路とトラックが必要です。港だけ、道路だけ、鉄道だけを整備しても、途中の接続が弱ければ一つの輸送経路としては機能しません。

行政の計画にも、すでに「別の経路を持つ」という考え方がある

こうした問題意識は、今回の地震を受けて突然生まれたものではありません。国や鹿児島県、宮崎県の計画を確認すると、「多重性」「代替性」「複数の交通手段の接続」といった考え方がすでに盛り込まれています。

道路では、ミッシングリンク解消と4車線化が進められている

鹿児島県の「かごしま新広域道路交通ビジョン・計画」では、県全体で広域交通の多重性を確保する必要があるとされています。

大規模災害に備えた道路ネットワークの多重性・代替性を強化するとともに、道路、港湾、鉄道など交通手段同士の接続を強める方向も示されています。

東九州自動車道では、宮崎県南部から志布志方面に残る未開通区間の整備が進められています。供用済み区間でも、安全性向上や災害時の早期交通確保を目的として、暫定2車線区間の4車線化が進行中です。

鹿児島県「かごしま新広域道路交通ビジョン・計画」

国土交通省九州地方整備局「東九州自動車道 北九州市~宮崎市 開通10周年」

港では、耐震化と港同士の広域連携が検討されている

鹿児島県がまとめた志布志港の長期構想には、幹線貨物を扱う耐震強化岸壁、コンテナターミナルの耐震化、原木やコンテナの流出防止、港湾BCPに基づく対応などが盛り込まれています。

港湾BCPとは、災害が起きた際に港の機能を早く回復させ、緊急物資や一般貨物の輸送を再開するための事業継続計画です。

宮崎港、細島港、油津港でも港湾BCPが策定され、防災訓練が行われています。宮崎港の計画では、発災後3日で耐震強化岸壁と接続道路を使用できる状態にし、緊急物資輸送を始めるという目標も設定されています。

さらに九州地方整備局は、個々の港だけでなく、九州管内の港湾が互いに連携する「広域港湾BCP」の検討を続けています。2026年度も、港湾機能の早期復旧や緊急物資輸送の方法、実効性のある訓練計画を検討する業務が進められています。

鹿児島県「志布志港長期構想」

九州地方整備局「令和8年度九州管内の港湾における広域連携BCP検討業務」

東九州新幹線も、現在進行形で調査・要望が続いている

東九州新幹線は、北九州市から大分市、宮崎市付近を経て鹿児島市へ至る路線として、1973年に国の基本計画へ位置づけられました。

ただし、建設に向けた法定調査や着工が進む「整備計画路線」ではありません。基本計画に定められてから50年以上が経過していますが、現在も構想段階です。

一方、東九州新幹線鉄道建設促進期成会を構成する福岡、大分、宮崎、鹿児島の4県と北九州市は、国が2026年度に実施する基本計画路線のケーススタディの対象に、東九州新幹線を選ぶよう要望しています。

2026年1月の要望書では、地域振興や所要時間短縮に加えて、自然災害が多発する中で代替・補完ルートを確保する重要性にも触れています。

つまり、東九州新幹線を災害時の別軸として考える発想自体は、専門家ではない個人の思いつきではなく、自治体側の要望理由の一つにもなっています。

宮崎県「基本計画路線に係るケーススタディの対象路線選定に向けた要望活動について」

東九州新幹線鉄道建設促進期成会「要望書」

将来の備えとして、どのような選択肢があるのだろうか

過去の災害で機能したものと、現在すでに進められている計画を重ねると、将来に向けていくつかの選択肢が考えられるのではないでしょうか。

東九州自動車道を、非常時にも頼れる東側の道路軸にする

まず考えられるのは、東九州自動車道の未開通区間をつなぎ、北九州、大分、宮崎、志布志、鹿児島を結ぶ道路軸を完成させることです。

ただ、道路が一本につながるだけでは、九州自動車道から大量の車が移ってきたときに十分な代替路にならない可能性があります。

全区間を一度に4車線化するのは現実的ではないとしても、交通量の多い区間、一般道へ回りにくい区間、長いトンネルや橋がある区間、港へつながる区間などから強化する考え方はありそうです。

さらに、長距離を走るトラックの休憩、運転手の交代、荷物の積み替え、給油、冷蔵・冷凍貨物の一時保管ができる拠点も必要になります。

道路の整備は災害時だけのためではありません。平時にも輸送時間が安定し、志布志港や宮崎港、細島港を利用しやすくなれば、海上輸送を日常的に使う土台にもなります。

日豊本線を、旅客と貨物の補完ルートとして強くする

日豊本線については新幹線や高速道路の全需要を代替するのではなく、一部を安定して引き受ける補完ルートとして考える方が現実的に見えます。

法面、橋梁、盛土、排水設備などの防災対策を進めることに加え、列車同士がすれ違う交換設備や、貨物列車が旅客列車を待避できる設備が増えれば、非常時に設定できる列車の幅も広がります。

延岡や南延岡の貨物取扱能力を維持し、宮崎・都城地域と貨物駅を結ぶトラック輸送を強くすることも選択肢です。港と鉄道貨物の間で積み替えやすい設備があれば、鉄道、船、トラックを組み合わせやすくなります。

ただし、利用者や貨物量の少ない区間を将来にわたって維持するには、平時の利用も必要です。災害時だけ使いたいと考えても、普段使われず縮小された路線は、非常時に大きな輸送力を発揮できません。

志布志港・宮崎港・細島港を、海上の迂回路として使いやすくする

船の最大の特徴は、熊本や大分、福岡の被災区間を通らず、鹿児島や宮崎から関西・本州へ直接向かえることです。

その強みを非常時にも生かすには、岸壁や防波堤の耐震・津波対策だけでなく、船に貨物を載せる枠、トレーラーやコンテナ、荷役作業員、港から先のトラックまで準備する必要があります。

2018年豪雨の事例を踏まえると、災害時に利用できる一定の船腹を、荷主や行政、船会社があらかじめ取り決めておく方法も考えられます。

太平洋側の志布志港、宮崎港、細島港が同時に使いにくくなった場合には、鹿児島港や川内港などがどこまで補完できるのかという視点もあります。

一つの港ですべてを受け止めるのではなく、被害の状況に応じて別の港へ切り替えられる仕組みがあれば、海上輸送の強みはより大きくなります。

東九州新幹線を、長期的な旅客交通の別軸として考える

東九州新幹線は、この中で最も長期的で、費用も大きい選択肢。

仮に北九州、大分、宮崎、鹿児島を結ぶ新幹線が整備されれば、熊本を通る九州新幹線とは異なる高速鉄道軸が生まれます。西回りが長期間使えない際にも、旅客の一部を東側へ振り替えられる可能性があります。

一方で、整備費は非常に大きく、完成までには長い年月がかかります。人口減少が進む中での利用者数、建設費の負担、在来線の扱い、駅やルートをどこに置くのかといった課題もあります。

また、東九州新幹線が完成しても、飼料や原料、コンテナなどを運ぶ貨物列車の代わりにはなりません。新幹線は主に旅客交通の別軸として考え、物流は道路、日豊本線、港、船で支える必要があります。

すぐに建設するかどうかとは別に、「九州南部へ向かう高速鉄道が西回り一系統のままでよいのか」という問いを、災害時の代替性も含めて議論することには意味がありそうです。

道路・鉄道・船を実際に切り替える準備をしておく

大きなインフラ整備より早く取り組めそうなのが、既存の道路、鉄道、港、船を非常時にどう使うか決めておくことです。

道路や鉄道が止まった後で、初めて船会社へ空きを問い合わせ、港まで運ぶトラックを探し、荷物の積み方を確認していては、切り替えに時間がかかります。

例えば、次のような準備が考えられます。

  • 一定時間以上の不通が見込まれる場合の発動基準を決める
  • フェリーやRORO船に非常時の輸送枠を確保する
  • 貨物の種類に応じて利用する港や鉄道駅を決める
  • 港から鹿児島県内各地へ運ぶトラックを確保する
  • コンテナやトレーラー、荷役機械を相互に利用できるようにする
  • 行政、道路会社、鉄道会社、船会社、物流会社が共同で訓練する
  • 各道路・港・鉄道の利用可能状況を一か所で共有する

こうした準備は、新しい道路や新幹線が完成するのを待たずに始められます。九州地方整備局が進めている広域港湾BCPも、港同士の連携と実効性のある訓練を具体化する取り組みといえます。

どれか一つではなく、平時から使う経路を増やすことなのかもしれない

ここまで確認してみると、東九州自動車道、日豊本線、海上輸送、東九州新幹線のどれか一つを選べば解決する問題ではないことが分かります。

道路は、多くの車がそれぞれの目的地へ直接向かえますが、渋滞や事故、運転手不足の影響を受けます。鉄道は少ない人員でまとまった量を運べますが、線路が切れると自由に迂回できません。

船は陸上の被災区間を飛び越えられますが、船に載せられる量には限りがあり、港から先の輸送も必要です。新幹線は旅客交通の大きな別軸になり得ますが、実現までには長い時間がかかり、貨物を直接代替するものでもありません。

それぞれに強い部分と弱い部分があるからこそ、西回りが止まれば東回りへ、陸路が難しければ海路へ、一つの港が使えなければ別の港へと切り替えられることが大切なのでしょう。

そして、非常時に使える交通手段を残すには、平時にも利用されている必要があります。

普段からフェリーや鉄道貨物を利用する企業が増えれば、航路や貨物列車を維持する理由になります。東九州道や港へのアクセスが改善されれば、平時の物流にも使いやすくなり、災害時だけのためではない投資になります。

時間軸考えられる選択肢
比較的早く取り組めること災害時の輸送契約、港・船の利用枠、共同訓練、情報共有、代替ルートの事前設定
中期的に進めるもの東九州道の未開通区間、重要区間の4車線化、日豊本線の防災対策、貨物設備、港湾の耐震化
長期的に議論するもの東九州新幹線を含む高速鉄道網の別軸、港湾・道路・鉄道を一体化した南九州の物流網

すぐにできる運用面の準備と、時間をかけて進める施設整備、さらに次の世代まで見据えた交通網の議論を分けて考えることがポイントではないでしょうか。

今回の地震を、鹿児島の暮らしを支える道筋を考えるきっかけに

今回調べた内容だけで、どの道路をどこまで4車線化するべきか、日豊本線へどの程度投資するべきか、東九州新幹線を建設するべきかを判断することはできません。

費用や需要、技術、環境、地域への影響を含め、専門家や関係者による詳しい検討が必要です。実際には、ここで挙げたものより効果的な方法があるかもしれません。

それでも、過去の熊本地震では東側の港が実際に物流を支え、豪雨では複数の道路があることや4車線であることが早期の交通確保に役立ちました。一方、船の空き不足や、日豊本線自体の被災といった限界も表れています。

国や自治体も、道路の多重性、港湾の広域連携、東九州新幹線を含む高速交通網を検討しています。今回抱いた疑問は、決して突飛なものではなく、これまでも災害のたびに向き合ってきた課題の延長にあるようです。

スーパーに並ぶ食品も、鹿児島から全国へ届く農畜産物も、観光客や帰省する人の移動も、一本の鉄道や道路だけで成り立っているわけではありません。

西回りが使えなくなったとき、東回りや海上輸送へどこまで切り替えられるのか。その経路を、災害がない平時にもどのように維持していくのか。

今回の熊本地震は、被災地の支援と復旧を最優先にしながら、鹿児島や南九州の暮らしを将来どのような交通網で支えていくのかを、多くの人が考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。


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